活動実績
住まいの健康度調査について
本研究会では、住宅屋内の寒さを健康問題の原因の一つとして検討している。
昨年秋、本研究会として初めて、参加・協力団体ならびに企業の協力のもとに、高断熱住宅が居住者の健康にもたらす影響について調査を行った。
調査は、過去10年程度以内に、高断熱の戸建住宅に転居した家庭を対象に、寒冷感などの申告と、咳やアレルギーなどの健康障害の変化を回答させるアンケートによる。2008年10月に実施、およそ100件について回収し、結果の概要を第一次調査報告としてまとめた。
これによれば、
・高断熱住宅に転居した人の多くが、寒さを感じなくなった。
・ただし、集合住宅から戸建住宅に移った人は全体的に暖かさ感が少ない。
・同じ家でも、居間のように暖房を普通に使う部屋では暖かさ感が大きいのに対し、寝室や脱衣所などの暖房をあまり使わない部屋では、暖かさ感が多少減る。
・健康への影響では、以前の家で悩まされていた症状の多くが、転居後、改善していること。
などが示されている。特に、様々な症状が実際に軽減されている割合は予想以上に大きく、住宅の高断熱化の必要性につながるものとして重要であるとともに、調査結果自体の再現性・精度をより吟味しなければならないことを示していた。
これを受け、平成20年12月から21年1月にかけて、第二次調査としてより調査母数を拡大して実施した。短い期間の中での調査であったが、700件の住宅、2400人以上の居住者のデータが回収された。
各部屋の寒冷感・暑熱感の変化について
以下に、各部屋の寒冷感の変化を示す。第一次調査と同様の傾向になっている。
暖房室の寒冷感については、断熱グレードの差はあまり顕著ではなく、
以前の住宅が戸建であったか、集合住宅であったかの方が大きく影響していると思われる。
寝室などの暖房をあまり使わない部屋では、断熱グレードによる差も表れている。
居間→寝室→トイレ→脱衣所の順で「寒い」という回答の割合が増加する。
一般的な室温は、居間>寝室>トイレ・脱衣所、であり、
脱衣所は裸になって直接寒さを感じる場所なので、
この順は極めて妥当な結果になっていると考えられる。
暖かさについても同様である。
前住居が戸建か集合であるかで、大きな差があることが分かる。
性能表示制度では、等級4が最高等級になっており、
この断熱グレードの前提となる断熱基準も「次世代省エネ基準」と呼ばれるため、
等級4であれば断熱性能は十分、という考え方がビルダー、住宅メーカーに多くみられるが、
家の暖かさの観点では、さらなる高断熱化の効果が期待できるといえる。
健康影響度について
平成18年度の厚生労働省による国民健康栄養調査では、成人の平均喫煙率は24%となっている。
今回のアンケート協力者では12%と半分程度になっている。
回答者の多くが高断熱・高気密住宅に居住しており、
高断熱・高気密住宅の居住者は喫煙率が低い可能性がある。
半分以上、6割近い人が昼間は家にほとんどいない。これを踏まえると、
住宅の屋内環境の計画では、現状よりもう少し夜間の使用想定を強調しても良いのかもしれない。
ほとんど運動をしない、という回答が半分を占めている。
滞在時間と合わせて、多忙な現代生活を象徴している。
健康を保つためには、生活習慣の改善、特に運動による効果が期待されているが、
多忙な生活の中では実現はそうたやすいことではなく、
その点でも、住宅などの生活環境の改善が重要といえる。
以下に、以前の住宅で症状が出ていなかった人を母数にとり、 その中で新しい住まいに移って以降症状が出るようになった人の割合を示す。
また、以前の住居で症状が出ていた人を母数に取り、その中で新しい住まいに移って以降、
症状が出なくなった人の割合を以下にまとめる。
黄色で示した症状は、改善効果が高く出ているが、断熱グレードにはあまり関係していない。
すなわちこの改善は、住まいが新しくなることの効果で、
おそらくは室内の空気質やカビ・ダニなどの微生物との関係が深いと思われる。
それ以外の項目は、おおむね断熱グレードが上がると症状改善の割合が高くなる。
特に、気管支ぜんそく、かぶれについては、高断熱化の効果が期待できるといえる。
心臓病も同様の傾向にあるが、元の数値が小さいのでこの結果はあまり信頼できない。
ただしこれらの考察は、断熱グレード3の母数が他より一桁小さいため、
あくまで中間的なものであり、母数の拡大が必要である。
まとめ
約700件・2400名の協力を得て、
転居による寒冷感や健康性の変化に関する調査(第二次調査)を行った。
第二次調査の結果は、100件・340名を対象とした第一次調査で得られた結果を概ね同様であった。
すなわち、高断熱住宅に変わることで、住まいの寒さ感が大幅に改善されること、
健康障害の多くが現れなくなる傾向にある。
今回の調査では、さらに新しい住まいの断熱性による違いを検討した。
結果、寒冷感・暑熱感の改善と断熱性は明確に関連していること、この意味では、
等級4以上の高断熱化で、さらに改善効果が期待できること、健康性の点では、
いくつかの症状が単に転居によるものである可能性が高いこと、などが示された。
住まいの高断熱化が健康性にも大きな影響を与えることが、より一層明確になったと考えられる。
今後、今回の調査では母数の少なかった断熱性の低い住宅での状況、
ならびにさらに断熱性が進んだ住宅での状況を加えることで、
さらに本調査の信頼性が向上するものと考える。
